保険仲立人によるコラム 2015.3.1

他人事ではありません その③<従業員のメンタルヘルス>


「あなたの仕事についてうかがいます。最もあてはまるものに○をつけてください。」


1.非常にたくさんの仕事をしなければならない
(そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう)
2.時間内に仕事が処理しきれない。
(そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう)
3.一生懸命働かなければならない。
(そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう)

 

 平成26年6月、労働安全衛生法の一部を改正する法律が交付され、12月1日にはメンタルヘルス対策として、労働者数50人以上の事業場は、常時使用する労働者に対して医師、保健師等によるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。本制度の主たる目的は「労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること」であり、多くの企業では対策を検討されていることと思います。
*全従業員にストレスチェックを実施している企業は全体の12%程度(厚生労働省調査)。
*ストレスチェック等のメンタルヘルスサービスの外注化は可能。
*50人未満の事業場は当分の間努力義務。


 さて、厚労省は精神障害における労災認定のための要件を「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日)で明文化しました。それによると
「1.対象疾病を発病していること」
「2.対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」
「3.業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」
上記いずれの要件も満たす対象疾病は、「業務上の疾病」として取り扱うと明記されました。


そして具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに「中」程度と評価される場合であって、出来事の後に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)が認められる場合には、総合評価は「強」とする。という総合評価となる事に注意が必要です。労働法に詳しい弁護士によれば、裁判において参考にされる可能性もあるとのこと・・・。


表1.厚生労働省 (別表1)業務による心理的負荷評価表


具体的な出来事 心理的負荷の総合評価視点
心理的負荷の強度を「弱」「中」「強」と判断する具体例
21 配置転換があった ・職種、職務の変化の程度、配置転換の理由・経過等 ・業務の困難性、能力・経験と業務内容のギャップ等  ・その後の業務内容、業務量の程度、職場の人間関係等 (注)出向を含む

【「弱」になる例】

以前に経験した業務等、配置転換後の業務が容易に対応できるものであり、変化後の業務の不可が軽微であった

○ 配置転換があった  (注)ここでの「配置転換」は、所蔵部署(担当係等)、勤務場所の変更を指し、転居を伴うものを除く

【「強」になる例】 ・過去に経験した業務と全く異なる質の業務に従事することとなったため、配置転換後の業務に対応するのに多大な労力を費やした 

・配置転換後の地位が、過去の経験からみて異例なほど重い責任が課されるものであった 

・左遷された(明らかな降格であって配置転換としては異例なものであり、職場内で孤立した状態になった)

29 (ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた ・嫌がらせ、いじめ、暴行の内容、程度など、その継続する状況

【「弱」になる例】

 ・複数の同僚等の発言により不快感を覚えた(客観には嫌がらせ、いじめとはいえないものも含む)

【「中」になる例】 ・上司の失跡の過程で業務指導の範囲を逸脱した発言があったが、これを継続していない  ・同僚などが結託して嫌がらせを行ったが、これを継続していない

○  ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた 【「強」である例】 ・部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた 

・同僚などによる多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた 

・治療を要する程度の暴行を受けた

34 上司が替わった (注)上司が替わったことにより、当該上司との関係に問題が生じた場合は項目30(上司とのトラブルがあった)で評価する ○ 上司が替わった    

※厚生労働省「(別表1)業務による心理的負荷評価表」をもとに弊社にて内容を抜粋・作成。


 過去の判例(表2)のように、従業員の自殺の背景に、長時間労働や職場における高いストレス環境に原因ありと認められれば、企業は安全配慮義務に違反しているとして1億円を超える賠償額も認容されており、この度のストレスチェックの実施が早期発見のきっかけとなることからも、従業員のメンタルヘルスへの取り組みは企業のリスクマネジメントのひとつと考えることができるでしょう。


表2)過去の判例

 
裁判所名

裁判

年月日

事件名
概 要
賠償額
1 最高裁 H12.3.24 D事件 広告代理店A社に従業員として雇用されたB従業員が、長期にわたり残業を行う状態を1年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した。その後、B従業員の両親が広告代理店A社に対して、民法715条(使用者責任)に基づき損害賠償請求をした。 1億2,500万円の損害賠償額を認容した。
2 広島地裁 H12.5.18 O事件 A社に従業員として雇用されたX従業員が、B社に転籍し、特注ソース及び合せ酢の担当をしていたところ、時に過密かつ長時間の労働となるものであり、その作業環境が高温であるために、夏期においては身体的な慢性的疲労状態に陥りやすい業態であったことに加えて、特に猛暑が続いたことによって身体的疲労の蓄積が頂点に達していたところ、他の従業員の配転替えに伴う人的環境の悪化及び責任の程度が客観的にみても重くなったためうつ病をり患し自殺した。その後、X従業員の母親が、B社に対し安全配慮義務違反に基づき損害賠償を請求した。なお、X従業員が転籍したB社の実質はA社の一製造部門であり、B社は雇用主として、A社はX従業員に対して実質的な指導命令権を有する者として、X従業員に対して安全配慮義務を負っていることを認めている。 1億1,100万円余の損害賠償額を認容した。
3 大阪高裁 H23.5.25 D事件 飲食店をチェーン展開するY1社の従業員Aが、自宅において急性左心機能不全により死亡したことにつき(死亡当時24歳)、従業員の父母(相続人)である原告X1及びX2が、従業員Aの死亡の原因はY1社での長時間労働にあたるとして、Y1社に対しては不法行為又は安全配慮義務違反に基づき、また、Y1社の取締役ら4名に対しては不法行為又は会社法429条1項に基づき、損害賠償を請求した。 Y1社及びY2ら取締役の責任を認め、約7,800万円の支払いを命じた。

過去の判例資料をもとに弊社にて作成。

以上

 

◎5分でできる職場のストレスチェック(厚生労働省)
http://kokoro.mhlw.go.jp/check/


◎心理的負荷による精神障害の認定基準について(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43h.pdf

 

※企業のリスクマネジメントにお役立ていただくことを目的として情報提供させていただいております。

※一部、関連セミナー等を参考にした箇所もありますが正確性を保証するものではありません。また、事案そのものに対する批評その他を意図したものではありません。

 



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